X線CTとは、物体を360度全方向からX線で撮影し、得られた透過画像を用いて逆問題を解き、物体の断層像を得る方法です。CTとは、Computed Tomography の略です。
この透過画像から断層像への再構築の計算を行うのが再構成ソフトウェアです。X線CT装置のいわば “頭脳” と言えます。
また、CTスキャンでは、往々にして様々なアーチファクトが発生します。
再構成ソフトウェア「VCT」には、これらのアーチファクトを除去/低減する機能も備わっています。
画像計算速度の高速化
断層像の計算やアーチファクトの除去には膨大な計算が必要であり、通常のソフトウェアが計算に用いるCPU(中央演算処理装置)では計算時間がかかりすぎて実用的ではありません。
そのため、一般的に業務用の再構成ソフトウェアは、GPU(グラフィックボード・グラフィックカード・ビデオカード)を用いた並列計算を行い、実用的な速度を得ています。
再構成ソフトウェア「VCT」を用いた場合の再構成演算時間(撮影ファイル読み込み開始から3断面画像表示まで)の実測結果※を画像サイズ別に2例提示いたします。
※環境:NVIDIA GeForce RTX 3090 + i7-6850K、RAM Disk使用。
再構成前のVCT画像(透視画像表示)
再構成後のVCT画面
条件1(画像サイズ小)
再構成画像サイズ:992 x 992 x 992
透過画像サイズ:992 x 992
投影数(プロジェクション):600
画像表示まで3.8秒
条件2(画像サイズ大)
再構成画像サイズ:2048 x 2048 x 2048
透過画像サイズ:2048 x 2048
投影数(プロジェクション):900
画像表示まで31.4秒
高速再構成の実現により、大量の撮影サンプルの画像再構成が可能となりました。
これにより、品質管理や製造業におけるライン検査に非破壊検査装置としてのX線CT装置の導入が進んでいます。
補正機能について
メタル(金属)アーチファクト低減
樹脂などのX線吸収量の少ない物質中に金属が含まれているとき、しばしばメタルアーチファクトが生じます。
アーチファクトにより、金属の周辺/金属と金属を結ぶライン上にある構造が見えにくくなります。
状況にもよりますが、「VCT」の補正機能によりメタルアーチファクトを大幅に低減できます。
回転軸位置ずれ(シフト)補正
再構成プログラムは、X線焦点から検出器へ下した垂線と試料台の回転軸が交わることを前提にしています。
しかし、実際には、いくつかの理由で回転軸の位置がずれてしまいます。1ピクセルでもずれると、画像にブレ/ぼけが生じます。
ずれの方向によっては、以下の画像のようにブレた画像となるため、補正が必要です。
「VCT」が搭載している自動補正機能は、位置ずれ(シフト)値を自動で計算し、最適な値で補正を行います。
ビームハードニング補正(ビームハードニングアーチファクト対策)
再構成プログラムは、単色X線による撮影を前提に組まれています。
白色X線で撮影すると、ビームハードニングと呼ばれる現象が発生し、再構成後の画像(断面画像)の画素値(X線吸収係数に比例する値)が不正確になります(ビームハードニングアーチファクト)。
例えば、円筒形の均一な試料を撮影したときは、円筒中心部の画素値が相対的に低くなります。
「VCT」で適切な補正値を選択して補正すると、アーチファクトを大幅に低減させることができます。
リングアーチファクト低減
CT断面画像には、しばしば、リング状のアーチファクトが発生します。
X線検出器の感度補正が不十分だと、特定の検出素子で観測したX線吸収量が常に本来の値より多く、もしくは少なくなってしまいます。
360度回して撮影しますので、結果としてリング状の構造になります。
「VCT」には、このアーチファクトを大幅に低減する機能が含まれています。
エリアオーバー対策
基板のような板状の試料を撮影するとき、拡大率を上げるため、しばしば撮影範囲からはみ出す形で撮影を行うことがあります。
その際、エリアオーバーアーチファクトが発生し、撮影範囲の周辺部が白くなります。
「VCT」には、このアーチファクトをおおきく除去する機能が含まれています。
断面画像のHDR表示
金属と樹脂などのX線吸収量が大きく異なる材質から構成された試料を撮影したとき、通常のコントラスト調整では、低い吸収量の領域と高い領域を同時に観察することが困難になります。
「VCT」には、両者を同時に観察するための「HDR表示」機能が備わっています。
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